K氏のソムリエへの長くて短い道

昨年の受講生。JSA認定ソムリエ。過去の職業経験等からソムリエを取得するも、現在の主な仕事はデザイナー兼ライター。東京生まれ、東京育ちながら、京都を愛するあまり数年前より移住。心は関西人なれど、バリバリの関東弁を話す。前世はブルゴーニュワイン好きのイタリア人、と自称する54歳。
第2話 初めての授業、そして長い道のりの始まり(2011.6月)

見出し最初の授業の日が来ました。その授業に、私は教科書だけを持ってぶらりと行きました。席について周りを見ると、当然のことながらみんなノートと筆記用具を持っています。しかたなく、顔見知りになっていたタスト・ヴァンのスタッフに筆記用具を借りました。あきれた生徒です。その、勉強というものを舐めきった態度の災いは、後々まで自分に降りかかってくるのですが。

見出しさて、今度はホンモノの井上先生が正面に座っています。フィギアそっくりですが、さすがに実物大です。しかも、ただならぬオーラを漂わせています。授業の最初に、井上先生はやおら立ち上がり、ホワイトボードに大きく「ワイン」と書きました。そしてその右横に縦に1本線を引き、さらにその右横に「日本酒」「ビール」「ウィスキー」と書きました。そして言ったのです。「皆さん、この違いがわかりますか?」

見出しここで、自慢するつもりではありませんが(実はするつもりですが)、私にはその答えがすぐに分かりました。(なんだよ、水をつかっていない、ってことだろ?)心の中でそう言いながら周りを見ると、みんなキョトンとした顔をしています。(あれ?)と思いました。ワインの醸造は水を使わない、つまりワインは全部果汁で作られているんだ、ということに気づいたことが、私がワインにのめり込むきっかけだったので、それに他の受講生が気づいていないということが、なんだか不思議な気がしたのです。いくつかトンチンカンなやりとりが生徒と井上先生の間でなされ、その後で井上先生が、「実は、ワインには一滴も水を使われていないんです」と明かしたときに、受講生の間に「へー」という雰囲気があったのを見て、(あれ?俺って、イケルかも)と勘違いしてしまったのは、もちろん私が浅はかだったからです。そしてその後の何ヶ月かで、それを痛いほど思い知らされることになりました。

見出しその後授業の進め方などについて少し説明があった後、いよいよ待望のテイスティングになりました。目の前に白・赤2種類のワインが置かれます。ワイン好きとしては、喉が鳴ります。と、そこで井上先生が「テイスティングの時は、絶対飲み込まないで下さい」と衝撃的なことを言いました。え?そんなこと無理だよ、と思ったのが顔に出たのでしょう。先生がわざわざこちらを見ながら「わかりましたか?」と念を押して、ニヤッと笑いました。そして井上先生はワインを口に含んではき出し、滑らかな口調で、テイスティング・コメントを言い始めました。生まれて初めて聞くプロのフルコメントはひたすら格好良く、ああ、ソムリエを目指して良かったな、と思った瞬間でした。その時のワインが何だったか覚えていませんが、もう十何年意識的にワインを飲んできたのに、品種もなにも全く当たらなかった衝撃だけは覚えています。こうして、最初の授業は様々な思いと共に終わり、合格への長い道のりが始まったのでした。

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